社史

世界初の3Dハイビジョン衛星生中継に参画

「LAWSON SPECIAL 吉川晃司/3D R&R SHOW」のライブ会場(横浜スーパー・ファクトリー、1994年)「LAWSON SPECIAL 吉川晃司/3D R&R SHOW」のライブ会場(横浜スーパー・ファクトリー、1994年)

 1994(平成6)年2月1日に行われた、吉川晃司のスペシャルコンサート「LAWSON SPECIAL 吉川晃司/3D R&R SHOW」は、3Dハイビジョン映像による衛星生中継という世界初の試みとして、音楽業界のみならずメディアからも大きな注目を浴びた。
 同コンサートは、吉川のデビュー10周年記念のツアー「My Dear Cloudy Heart」に先立って、デビュー日に当たる2月1日に行われた。メインのライブ会場と全国17ヵ所の会場を通信衛星で結んで、3Dハイビジョンという鮮明かつリアルな映像と音を同時に楽しむというスペシャルなイベントであった。
 ヒビノはこの画期的な試みに際して、映像事業部が衛星中継業務と各会場の映像オペレートを、PA事業部が音響オペレートを担当。1984年に打ち出した「AVCC」方針が、より具体化した案件の一つであった。
 ヒビノのスタッフは「世界初」のイベントにしようと、中継映像を3Dハイビジョンにすることを提案した。ソニーPCL株式会社が構築した3Dハイビジョンカメラシステムによってステージの模様を撮影し、通信衛星「SUPERBIRD」を介して各会場に配信。それぞれの会場に設置した300〜600インチのスクリーンに映し出すというプランだった。

通信衛星「SUPERBIRD」の衛星中継車(写真協力:スカパーJAST株式会社)通信衛星「SUPERBIRD」の衛星中継車(写真協力:スカパーJAST株式会社)

 運営費用は5億円、大手コンビニエンスストアのローソンの協賛により、世界初のコンサートが実現の運びとなった。全18会場・3万人分のチケットは、抽選により無料で提供された。
 コンサート会場は横浜スーパー・ファクトリー。約500人の観客を集めて行われたライブの模様は、全国17ヵ所の会場(東京・東京厚生年金会館、北海道・月寒グリーンドーム、宮城・仙台サンプラザホール、愛知・愛知県勤労会館、大阪・藤井寺市立市民総合会館、広島・広島厚生年金会館、福岡・電気ホールほか)に配信された。中継先の入場者全員には、3D映像用の偏光眼鏡が配付された。

「LAWSON SPECIAL 吉川晃司/3D R&R SHOW」新宿会場「LAWSON SPECIAL 吉川晃司/3D R&R SHOW」新宿会場

 公演時間約60分、当時まだ珍しかった3Dハイビジョン映像によるスペシャルステージは、観衆に新鮮なインパクトを残した。

「avex rave '94」では東京ドームがメイン会場に。アストロビジョンも運用した「avex rave ’94」では東京ドームがメイン会場に。アストロビジョンも運用した

 同年8月に行われたイベント「avex rave ’94」では、2回目の3Dハイビジョン衛星生中継(全国4ヵ所)が行われ、ヒビノは引き続き業務を担当した。「avex rave ’94」は、エイベックス・ディー・ディー株式会社(現 エイベックス株式会社)によるファンサービスのためのディスコミュージックコンサートで、札幌、名古屋、大阪、福岡を結んで、メイン会場の東京ドームでのコンサートを、3Dハイビジョン映像で同時配信した。配信先の会場では2〜3面のスクリーンが設けられ、参加者は3D映像用の偏光眼鏡をかけて、3時間半にも及ぶ熱狂の時間を共有した。
 ちなみに、1回目の吉川晃司コンサートの配信はミューズ方式のアナログ伝送であったのに対し、2回目(大阪会場のみ)はデジタル圧縮方式によるデジタル伝送によるものだった。これは当時世界初の試みだった。
 離れた場所へライブ映像を提供する「クローズド・サーキット」は、特にスポーツ中継の分野で急速に浸透していく一方で、音楽の分野では配信会場と受信会場との音質のギャップ(会場の音響設備や回線品質によって、音質が大きく左右される)など、インフラ的な課題は残されたものの、ヒビノのAVCC路線は、新たな一歩を踏み出した。

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※ここに掲載した情報は、2015年2月発行の「ゴールなき頂を求めて 挑戦こそが我らの誇り ヒビノ株式会社50年史」より転載したものです。この記事の無断引用、無断転載を固く禁じます。

第4章 転換期 1994〜2003

第4の柱を求めて

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