社史

ビデオプロジェクター「Talaria TLV-Turbo」導入

ビデオプロジェクター「Talaria TLV-Turbo」ビデオプロジェクター「Talaria TLV-Turbo」

 1991(平成3)年5月、AVCシステム事業部は当時世界最高の性能を持つといわれたビデオプロジェクター「Talaria TLV-Turbo」を2台導入した。最大600インチ、ハイビジョンにも対応する同機材は当初10台程度の限定生産品で、メーカーのアメリカGE(ゼネラル・エレクトリック)社は極東地域における割当台数を2台とし、その2台をヒビノが独占購入する形となった。
 Talariaは、GE社がNASAのケネディ宇宙センター用に開発したモニターの技術を一般用に改良した製品で、単体ユニットだけでもカラー映写を可能にするものだった。そして1991年に発表した「TLV-Turbo」は、Talariaを3台使用しRGBによるカラー分解をしたうえで、油膜をフィルムに見立てて投射するというユニークな構造で、当時としては画期的な5,000ルーメンという明るさを実現し、暗転しなくても映像がくっきり見えるという性能を有していた。
 一説には、ヒビノの運用技術の高さを見越して、GE社がヒビノを売り先として選んだといわれる。油を使う構造ゆえウォームアップやクールダウンに時間がかかり、同時にメンテナンスにも相応の手間がかかるというTLV-Turboは、高い運用技術なくしては、実際に使いこなすのは困難だった。運用に携わった堀田久幸(現 ヒビノビジュアル Div.業務部部長)は「使い方を間違うとクオリティが大きく変わってしまうという、アナログの権化のような機材でした。機材というより、まるで生きもののように感じました。それくらいデリケートでした」と回顧する。
 プロジェクターは画像調整に一定のスキルが必要とされ、その調整技術を社内に蓄積してきた経緯があった。堀田をはじめとする卓越した技術を持つチームを、当時社内では「PJ(ピージェイ)隊」と呼んでいた。運用に高いスキルを要するTLV-Turboを極東地域で扱えるのは、ヒビノのPJ隊スタッフだけだった。TLV-Turboの導入は、ヒビノのプロジェクター運用技術を、国内のみならず世界的にも示したともいえよう。

Talaria TLV-Turbo調整の様子Talaria TLV-Turbo調整の様子

 Talaria TLV-Turboは、1991年5月、「社団法人実践倫理宏正会創立45周年記念式典」で初めて使用され、高輝度の液晶プロジェクターやDLPプロジェクターが本格導入されるまでの間、ハイエンドな映像が求められる、あらゆる案件でフル稼働した。
 その性能を生かした代表的案件として挙げられるのは、NHK名古屋放送局による「ハイビジョン・オペラシアター」であろう。これは、ハイビジョン収録したオペラ作品を通して、ハイビジョン画像の美しさを味わってもらうという企画で、第1回は1992年10月に愛知県芸術劇場で行われた。
 PJ隊は、ステージに設置した600インチのスクリーンに、より明るく鮮明なハイビジョン映像を映し出すために、TLV-Turboの基本仕様には設定されていなかったデュアル投影という手法にチャレンジすることを決め、独自の改造を施した。また、TLV-Turboを客席に置いた場合に生じる稼働音の問題を解決するために、客席最後部の映写室内に収まるよう、筐体の改造も行った。
 こうした取り組みはNHK名古屋放送局から高い評価を得て、のちに感謝状を拝受した。「ハイビジョン・オペラシアター」はその後も断続的に開催され、ヒビノは2000年まで受注した。

 なお、1992年2月に行った組織改正で、AVCシステム事業部を映像事業部に改組している。

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※ここに掲載した情報は、2015年2月発行の「ゴールなき頂を求めて 挑戦こそが我らの誇り ヒビノ株式会社50年史」より転載したものです。この記事の無断引用、無断転載を固く禁じます。

第3章 拡大期 1984〜1993

音と映像のプレゼンテーター誕生

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