社史

コンサート音響事業における国内アーティスト案件の拡大

 PA事業部は、海外の一流アーティストはもとより、国内アーティストの案件を次々と獲得し実績を積み重ねていった。1984(昭和59)年に大江千里、尾崎豊、浜田省吾、チェッカーズなどの音響を初めて担当すると、その後も安全地帯、TM NETWORK、渡辺美里、レベッカ、BUCK-TICK、徳永英明、X(現 X JAPAN)、B’z、LUNA SEAなど、ロックやポップスなど幅広いジャンルのメジャーアーティストの案件を開拓し、ホールからアリーナ、野外イベントまでをカバーする機材力とオペレート技術による全面サポート体制を確立していった。
 オペレーターをはじめとする専任のスタッフを帯同するケースが多い海外アーティストに対して、国内アーティストの場合は、現場でオペレート実績を重ねていくことによって信頼関係を獲得し、特定のアーティストに指名されるヒビノのPAオペレーターが増えていった。音づくりに対するこだわりや方向性の一致によって生まれた「人と人との結びつき」が、アーティストとの強い絆となり、またその評判が評判を呼んで、新たな案件を呼び込むという好循環が、コンサート音響事業の拡大を支えた。
 第一線のオペレーターとして活躍しながら、部長として全チームのマネジメントにも当たっていた橋本良一は、年々拡大する案件をいかに効率的に回していくかというテーマに取り組んだ。同時期(同時間帯)に行われる複数のコンサートに対して、人員をどう配置するか、限りある機材をいかに効率よく運用していくか。この“PAマネジメント”ともいうべき領域は、業界のトップランナーとなった「ヒビノサウンド」が、自社のサービスクオリティを維持するためにも、率先して取り組んでいかなければならないことだった。
 橋本はこれまでの経験をフルに生かして、機材をパッケージ化していく作業を進めた。各案件に対して、機材をそのつどピックアップするのではなく、パッケージで運用していくほうが明らかに効率的であった。まず、フライトケースを搬送用トラックの荷台の横幅サイズにぴったり収まるように作り直し、さらに荷台への最適な積み方をマニュアル化することで、機材の積み込み作業をスムーズに行えるようにした。また、ラックに満載された機材の細かな配線作業は現場で行わず、あらかじめ会社で済ませることとした。コンポーネントとしてラックにプリセットした機材を搬入すれば、現場でのセッティング時間も大幅に短縮され、トラブルも防げるというメリットがあった。機材のチーム数は、1984年の段階で15となり、そのすべてを運用可能とするスタッフ数を確保するまでの規模になった。大会場や全国ツアーの増加とともに、多くの案件を手掛けていくために編み出されたパッケージ運用の手法は、アップデートを繰り返しながら現在もチーム数を増やし続けている。

「国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW」(国立競技場、1985年)「国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW」(国立競技場、1985年)

 1985年6月15日、国立競技場に6万人以上の聴衆を集めた超大型ミュージックイベント「国際青年年記念 ALL TOGETHER NOW」は、そのスケールゆえ、大手音響各社による共同運営となったが、ヒビノ電気音響はこれまでの実績を買われて、幹事社を務める栄誉を勝ち取った。
 同年に国連で採択された国際青年年を記念して開催されたこのイベントは、吉田拓郎、オフコース、アルフィー(現 THE ALFEE)、チェッカーズ、さだまさし、松任谷由実など、文字どおり国内の人気アーティストが一堂に会するということで、ステージ演出や音響機材の規模も規格外だった。
 競技場のフィールド内に放射状に設けられた8つの円形ステージは、フィールドの中心に向かって敷かれたレール上を動く構造になっており、アーティストの音響機材をセッティングしたそれぞれのステージが、出番ごとにセンターに移動するという仕掛けになっていた。
 過去最大級の音響機材を投入した同イベントの幹事社として、当時の現場を担当したスタッフは、夢のような顔合わせと壮観なステージングに感激しつつも、PAという仕事のすばらしさをあらためて実感したという。

TFA Turbo 計96本を使用したホールコンサート(1986年)TFA Turbo 計96本を使用したホールコンサート(1986年)

 1986年11月のLOUDNESS大阪城ホール公演では、TFA Turboを片側48本、計96本使用するという超大型音響システムを構築。その凄まじいまでの爆音は、ジャパニーズメタルの雄であるLOUDNESSの魅力を限界まで引き出した。
 翌1987年の1月から2月には、HOUND DOG(10days+1day、1月26日〜2月6日、10日)、The Street Sliders(1月30日)、KUWATA BAND(2月7日〜9日)と続いた日本武道館でのコンサートの音響を15公演連続で手掛けるという業界初の快挙を成し遂げた。

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※ここに掲載した情報は、2015年2月発行の「ゴールなき頂を求めて 挑戦こそが我らの誇り ヒビノ株式会社50年史」より転載したものです。この記事の無断引用、無断転載を固く禁じます。

第3章 拡大期 1984〜1993

音と映像のプレゼンテーター誕生

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