社史

「大喪の礼」「即位の礼」の中継業務を担当

 映像部が短期間に積み上げていったイベント映像運用の実績は「国民的行事」への参画という形で、さらに大きな一歩を示した。宮内庁関係の式典運営を数多く手掛ける株式会社ムラヤマから、昭和天皇崩御に伴う皇室伝統の葬儀「大喪の礼」の映像サポート業務の依頼が舞い込んだのだ。
 1989(平成元)年2月24日、雪混じりの雨の中、新宿御苑で行われた本葬に当たる「大喪儀」は、皇室の葬儀としては初めて中継カメラが入り、当日の模様はテレビ・ラジオで全国に生中継された。ヒビノは来賓用のサービスモニターなどの設置と運用を担当。モニターには、日立製の高性能リアプロジェクションモニター「ネオビジョン」を使用した。ケーブルの敷設など、1ヵ月前から新宿御苑に詰めての念入りな作業は、寒さとの戦いだったという。
 そして翌1990年11月12日に皇居内の宮殿・豊明殿で執り行われた「即位の礼・正殿の儀」においては、監視用カメラと記録用カメラ、宮殿内の来賓用モニターなど、主要映像機器の設置と運用を担当することとなった。現場を取り仕切る日比野晃久は、国事行為である正殿の儀を担当するに当たって、「映像部門発足以来の大仕事であり、失敗は許されない」として、同案件を「SKI ’90」(SKI=SOKUIの略)と命名し、全社挙げてのプロジェクトと位置づけた。本件に関わったスタッフは映像関係だけで延べ1,200名、ヒビノ全体では延べ1,500名を超えた。
 機材については、監視用カメラには株式会社ヒビノテルパ(工業用監視装置メーカーで、当時ヒビノの関連会社。現 ヒビノデータコム株式会社)製を2台使用、記録用カメラにはソニー製ベータカム「BVP-70IS」「BVP-70」各3台、同スタジオ用カメラ「BVP-370」2台、池上通信機製「HL-79E」7台が使用された。
 また70ヵ国に及ぶ各国の元首クラスをはじめとする来賓へのサービス用として宮殿内に設置されたモニターには「ネオビジョン」を9台使用。さらに宮殿外に設置した報道陣向けサービスモニターが約150台、映像・音声ケーブルの総敷設距離は30kmに及ぶという、まさにビッグプロジェクトであった。
 同年10月から始まった皇居内での機器設営は、入場時から非常に厳しいチェックのもと、作業時間や設置場所にもさまざまな制約が課せられた。また宮殿内の設備や調度品などを破損したりすることのないよう、細心の配慮をしながらのデリケートな作業を伴った。
 しかし、日比野晃久を筆頭に、当時の現場を知る複数の映像スタッフによれば、普段は立ち入ることすらできない皇居内での作業は、新鮮な緊張感とともに大きな充実感につながったという。
 1ヵ月以上にわたった「SKI ’90」プロジェクトは、全社の総力を結集し、恙なく終了した。
 即位の礼から5日後の11月17日に行われた「天皇陛下御即位奉祝大提灯パレード」では、皇居前広場にて1989年10月に初導入した車載型大型映像表示装置「アストロビジョン」が稼働した。同広場に集まった約5万人の参加者に向けて、二重橋から挨拶される天皇皇后両陛下のお姿を中継した。

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※ここに掲載した情報は、2015年2月発行の「ゴールなき頂を求めて 挑戦こそが我らの誇り ヒビノ株式会社50年史」より転載したものです。この記事の無断引用、無断転載を固く禁じます。

第3章 拡大期 1984〜1993

音と映像のプレゼンテーター誕生

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