社史

PA事業部設立 コンサート音響分野に乗り出す

Shureボーカルマスターを用いたPAオペレートの様子(1971年)Shureボーカルマスターを用いたPAオペレートの様子(1971年)

 当代一流の歌手が認めたShureの評判は口コミで広がったが、そのうちに「購入するのは無理だけれど、貸してもらえないか」という問い合わせが舞い込むようになった。日比野はジュークボックスのときと同様、レンタルサービスを始めることにした。
 スピーカーシステムをコンサート会場に届け、適切な設置(セッティング)を行う。また顧客の要望に応じて運用(オペレーション)も併せて行った。デモンストレーションで培った技術と経験を生かして、最適な調整を施したスピーカーシステムは、性能が最大限に発揮され顧客から喜ばれた。
 機材のレンタルに加えて、セッティング+オペレーションという仕事の組み合わせは、ヒビノに新しい業務領域をもたらした。これまでの喫茶店音響やジュークボックスの事業はメンテナンスなどアフターサービスの手間とコストがかかり、必ずしも利益率の高いビジネスではなかった。しかし舞台音響機材のレンタルは、アフターサービスの必要がなく、機材も流用できるという点で利益が見込めた。
 1971(昭和46)年4月、コンサート用音響機材のレンタルと設置・オペレートを行う専門部署として、新たにPA事業部を立ち上げた。翌5月には、Shure製品のデモンストレーションを通じて知り合ったプロモーターのオールプロデュースから、フランスの人気女性歌手シルヴィ・バルタンの日本ツアーの仕事を受注した。全国7ヵ所の会場では、ヒビノが設置したShureボーカルアンプが使われた。
 海外の一流アーティストの中には、自らの「音」に徹底したこだわりを持ち、世界中のどのコンサート会場でも満足のいく音が出せるようにと、お気に入りのPA機材をわざわざ本国から持ち込んだり、オペレーターをはじめとする専属のPAスタッフをツアーに帯同させるケースも少なくなかった。
 だが、アーティスト側としては、スピーカーなど特に大型の機材を海外から持ち込む手間とコストを考えれば、各公演先で現地調達できるに越したことはない。当時Shureをはじめとする輸入音響機材を持つ業者は数少なく、ヒビノのレンタルサービスは特に海外アーティストの招聘元に重宝される存在となった。

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※ここに掲載した情報は、2015年2月発行の「ゴールなき頂を求めて 挑戦こそが我らの誇り ヒビノ株式会社50年史」より転載したものです。この記事の無断引用、無断転載を固く禁じます。

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