バーチャルプロダクションの事業化を果たしたヒビノビジュアルグループの次なる挑戦

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この記事は、第63期中間報告書(2025年12月発行)に掲載した特集・取締役インタビューです。
  • 芋川 淳一

    取締役 常務執行役員コンサート・イベントサービス事業ヒビノビジュアルグループ担当

  • 和田 篤司

    CHホールディングス株式会社代表取締役社長

大型映像サービスの高度化を支える制作体制の拡充とAI活用

AIの進化により、大型映像サービスや映像制作のあり方が大きく変化しています。こうした変化が事業にもたらす影響や可能性について、お二人の見解をお聞かせください。

芋川 「AIがもたらす最大の価値は、私たちが大切にしてきた「世界観の具現化」をさらに高いレベルで実現できる点にあります。お客様の「魅せたい・伝えたい」というイメージをより忠実に取り入れ、情緒豊かな映像表現につなげていくために、生成AIは大きな力を発揮し始めています。 機材面でも進化が見られます。ROE Visual社がGPUを搭載したLEDディスプレイ・システムを発表し、AIによる解像度のアップスケールやフレームレート変換など、映像処理の高度化が実用段階に入っています。競争環境が厳しさを増すなか、当社はこうしたGPUベースの次世代LEDシステムをいち早く導入できるよう、同社と連携して検証を進めています。 制作面では、プリビズの効果が特に大きく、生成AIの導入により具体的なイメージを迅速に提示できるようになりました。お客様とクリエイターの認識共有が容易になり、映像表現の精度も飛躍的に向上しています。AIは表現の幅を広げるだけでなく、制作フロー全体の質を高める手段として位置づけています」

和田 「AIは制作プロセスの効率化にも寄与しています。これまで人手で行っていた下準備の一部をAIで代替できるようになり、撮影や編集の工数を削減できるようになりました。負荷の軽減により、クリエイターが創造的な工程に集中できる環境も整いつつあります。 また、背景映像や各種素材をAIで生成することで、ロケーション確保やCG制作に要してきた時間・コストを抑えられ、案件全体の生産性向上にもつながっています」

CHグループの子会社化やウィットコレクティブ合同会社(以下、「WIT COLLECTIVE」)との協働により、制作体制の構築とAI活用が同時に進んでいます。今後どのような相乗効果や価値創出を見込んでいますか。

芋川 「当社は大型映像の運用で培ってきた技術・ノウハウを基盤に、コロナ禍でのイベント制限を契機としてバーチャルプロダクション事業に着手しました。NHKやTBS、Netflixのドラマ制作など幅広い案件をサポートし、着実に実績を積んでいます。 さらに、「メタバース プロダクション」プロジェクトに参画する企業各社が運営する3つのスタジオにより、CMやミュージックビデオなど、年間を通じて安定した撮影需要に対応できる体制も整いました。加えて、CHグループの子会社化により、企画・撮影・編集までを完結できる制作体制が確立し、内製化が大きく進展しました。こうした取り組みにより、バーチャルプロダクション事業は、ヒビノビジュアルグループにおいて事業化を実現できたと認識しています。

今後、バーチャルプロダクションをより一般的な撮影手法として普及・拡大させることを視野に、今年6月からは、生成AIを活用した映像・体験プロデュースを行うWIT COLLECTIVEとの協業を開始しました。最近サポートした河合塾のCMでは、学校内のシーンの背景映像を同社が生成AIで制作し、当社スタジオで撮影を行いました。バーチャルプロダクション撮影にAI生成の背景という選択肢が加わることで、ロケや撮影許可に制約のあるケースにも柔軟に対応でき、こうした案件でのニーズが今後高まっていくと見ています」

WIT COLLECTIVEとの協働実績 学校法人河合塾26年度ポスター
WIT COLLECTIVEとの協働実績 「AI LOVE YOU展」(dentsu Japan主催「AI DAYS」イベント内にて再展示)

和田 「あわせて、CHホールディングスは今年10月、生成AIを活用した映像制作に特化した子会社「株式会社まんなか」を設立しました。AIによる背景映像や素材制作のワークフローを確立し、地方企業や小規模案件にも柔軟に対応できる制作体制を整備しています。短納期・高品質・適正コストというニーズに応えながら実績を積み重ね、将来的にはAI活用型の映像制作を標準的なプロセスへと発展させたいと考えています」

芋川 「さらにWIT COLLECTIVEは、生成AIを用いた体験型・対話型コンテンツの開発にも注力しています。電通とWIT COLLECTIVEによるイベント「AI LOVE YOU展」では、来場者が“空想の世界”を入力すると、AIクリエイターが瞬時にビジュアルを生成する企画展示が行われ、当社はその再展示においてLEDディスプレイを提供しました。AIによるリアルタイム生成と大型映像を組み合わせた体験は、今回のケースにとどまらず、教育やエンターテインメントなど多様な領域への応用が期待できます。今後は、当社グループの大型映像技術や制作機能と、WIT COLLECTIVEの生成AIを基盤とした企画力を掛け合わせ、新たな映像体験の創出と事業化を進めていきます」

イマーシブエンターテインメントを新たな戦略事業として位置づける

芋川 「ヒビノビジュアルグループでは、没入感の高い映像体験を提供する「イマーシブエンターテインメント」を新たな戦略事業と位置づけ、2023年11月開設の「Hibino Immersive Entertainment Lab」を中心に研究開発を進めています。現在は、Liminal Space社が開発した3次元LED技術を組み込んだ「Immersive LED System」を軸に、空間演出やコンテンツの可能性を検証しています。

ロケーションベースエンターテインメントの一つの成功例として、同社が手掛けた「Bob Marley Hope Road」が挙げられます。ガイドに導かれてコースを進み、最後にたどり着くステージでは、リアルパフォーマンスと3D LEDディスプレイに映し出されるバーチャル背景、さらにエフェクトが融合するショーを体験できます。故人アーティストの世界観を再現するロケーションベースエンターテインメントはグローバルで需要が高まっており、イマーシブ技術との親和性が高い領域です。

一方、アーティストに関する過去映像の多くは2Dで記録されているため、これらを立体的に再構築するうえでは、2D映像をより没入感がありかつ自然な3D映像へ変換するAI技術が活用されています。

日本には世界的に評価される「アニメーション」という大きな資産があり、静止画のアニメーション化や2Dから3Dへの変換技術を組み合わせることで、日本ならではのイマーシブコンテンツを創出できる可能性があります」

和田 「こうしたAI活用が広がる一方で、ライブパフォーマンスや空間が生み出す臨場感といった「リアルがもたらす価値」は、依然として代えがたいものです。

CHグループはヒビノグループに加わったことで、このリアルの力と、私たちが培ってきた企画・制作力、そして生成AIをはじめとする新しい技術を有機的に結びつけた映像制作に取り組めるようになりました。これはヒビノグループだからこそ実現できる総合力であり、CHグループにとっても大きな競争優位性になると考えています」

大型映像技術と制作力が融合し、新たな価値創出に向けた体制が整うなか、ヒビノビジュアルグループの果たすべき役割をどのように考えますか。

芋川 「当社グループの使命は、「音と映像で、世界に感動をクリエイトする」ことです。私たちヒビノビジュアルグループは、コンサートやイベントの現場で大型映像の運用力を磨き続けてきました。近年は、バーチャルプロダクションやイマーシブエンターテインメントといった、新しい表現技術にも挑戦しています。

今私たちが向き合っているのは、リアルとバーチャルをどう融合し、次世代の体験価値として社会に届けていくかというテーマです。大型映像を基盤に、先進的な技術と表現手法を取り込みながら、ヒビノにしか生み出せない体験価値を創り続けること。それこそが、ヒビノビジュアルグループとして果たすべき役割だと考えています」

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