大型映像サービスの高度化を支える制作体制の拡充とAI活用
─ AIの進化により、大型映像サービスや映像制作のあり方が大きく変化しています。こうした変化が事業にもたらす影響や可能性について、お二人の見解をお聞かせください。
芋川 「AIがもたらす最大の価値は、私たちが大切にしてきた「世界観の具現化」をさらに高いレベルで実現できる点にあります。お客様の「魅せたい・伝えたい」というイメージをより忠実に取り入れ、情緒豊かな映像表現につなげていくために、生成AIは大きな力を発揮し始めています。 機材面でも進化が見られます。ROE Visual社がGPUを搭載したLEDディスプレイ・システムを発表し、AIによる解像度のアップスケールやフレームレート変換など、映像処理の高度化が実用段階に入っています。競争環境が厳しさを増すなか、当社はこうしたGPUベースの次世代LEDシステムをいち早く導入できるよう、同社と連携して検証を進めています。 制作面では、プリビズの効果が特に大きく、生成AIの導入により具体的なイメージを迅速に提示できるようになりました。お客様とクリエイターの認識共有が容易になり、映像表現の精度も飛躍的に向上しています。AIは表現の幅を広げるだけでなく、制作フロー全体の質を高める手段として位置づけています」
和田 「AIは制作プロセスの効率化にも寄与しています。これまで人手で行っていた下準備の一部をAIで代替できるようになり、撮影や編集の工数を削減できるようになりました。負荷の軽減により、クリエイターが創造的な工程に集中できる環境も整いつつあります。 また、背景映像や各種素材をAIで生成することで、ロケーション確保やCG制作に要してきた時間・コストを抑えられ、案件全体の生産性向上にもつながっています」
─ CHグループの子会社化やウィットコレクティブ合同会社(以下、「WIT COLLECTIVE」)との協働により、制作体制の構築とAI活用が同時に進んでいます。今後どのような相乗効果や価値創出を見込んでいますか。
芋川 「当社は大型映像の運用で培ってきた技術・ノウハウを基盤に、コロナ禍でのイベント制限を契機としてバーチャルプロダクション事業に着手しました。NHKやTBS、Netflixのドラマ制作など幅広い案件をサポートし、着実に実績を積んでいます。 さらに、「メタバース プロダクション」プロジェクトに参画する企業各社が運営する3つのスタジオにより、CMやミュージックビデオなど、年間を通じて安定した撮影需要に対応できる体制も整いました。加えて、CHグループの子会社化により、企画・撮影・編集までを完結できる制作体制が確立し、内製化が大きく進展しました。こうした取り組みにより、バーチャルプロダクション事業は、ヒビノビジュアルグループにおいて事業化を実現できたと認識しています。
今後、バーチャルプロダクションをより一般的な撮影手法として普及・拡大させることを視野に、今年6月からは、生成AIを活用した映像・体験プロデュースを行うWIT COLLECTIVEとの協業を開始しました。最近サポートした河合塾のCMでは、学校内のシーンの背景映像を同社が生成AIで制作し、当社スタジオで撮影を行いました。バーチャルプロダクション撮影にAI生成の背景という選択肢が加わることで、ロケや撮影許可に制約のあるケースにも柔軟に対応でき、こうした案件でのニーズが今後高まっていくと見ています」


和田 「あわせて、CHホールディングスは今年10月、生成AIを活用した映像制作に特化した子会社「株式会社まんなか」を設立しました。AIによる背景映像や素材制作のワークフローを確立し、地方企業や小規模案件にも柔軟に対応できる制作体制を整備しています。短納期・高品質・適正コストというニーズに応えながら実績を積み重ね、将来的にはAI活用型の映像制作を標準的なプロセスへと発展させたいと考えています」
芋川 「さらにWIT COLLECTIVEは、生成AIを用いた体験型・対話型コンテンツの開発にも注力しています。電通とWIT COLLECTIVEによるイベント「AI LOVE YOU展」では、来場者が“空想の世界”を入力すると、AIクリエイターが瞬時にビジュアルを生成する企画展示が行われ、当社はその再展示においてLEDディスプレイを提供しました。AIによるリアルタイム生成と大型映像を組み合わせた体験は、今回のケースにとどまらず、教育やエンターテインメントなど多様な領域への応用が期待できます。今後は、当社グループの大型映像技術や制作機能と、WIT COLLECTIVEの生成AIを基盤とした企画力を掛け合わせ、新たな映像体験の創出と事業化を進めていきます」




