「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」の大型映像を担ったヒビノ。品質と情熱はプロのプライド

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※この記事は、2021年7月7日にHIBINO BREAK TIMEに掲載したものです。

コロナ禍で迎えた大晦日、2020年12月31日(木)。アイドルグループ「嵐」が、活動休止前のラストライブ「This is 嵐 LIVE 2020.12.31」を開催しました。大成功で幕を下ろした配信ライブ。コンサート大型映像で一端を担ったのは、ヒビノです。

メインステージの大型LEDディスプレイ・システムや最新鋭のXRステージ・システムについて「日本最大級の規模だった」と話すのは、ヒビノの映像チームを統括したヒビノビジュアル Div.田島直人です。

This is 嵐 LIVE 2020.12.31で運用された映像システムの随所には、ときに観る者の人生を変えるチカラを持つコンサートというライブ体験のために、技術を磨き、挑戦を重ねてきたヒビノのプライドともいえる品質へのこだわりがありました。ヒビノ広報がお伝えします。

ステージを彩った超大規模な映像システム

2020年12月某日、ヒビノの映像機材を大量に積んだ13台の11トン大型トラックが東京ドームに入りました。搬入・設置のスタートです。一般的なアリーナコンサートは、映像、音響、照明、道具などのすべてを合わせ20台ほどで全国ツアーを周りますから、一社でこの台数は驚愕の物量だったといえます。

メインステージの間口を超えて広がる巨大画面は、9mmピッチLEDディスプレイ・システム「Carbon9」です。使用したLEDパネルは、1,418枚。面積にして1,020㎡。全幅54メートル、高さは7階の建築物に匹敵する22.8メートルに及びました。

XRステージでは、ステージを構成するLEDディスプレイ(※)はもちろんのこと、カメラトラッキングや送出システムを含む「XRシステム」のすべてを担当しました。現実世界と仮想世界を融合させたXR空間で魅せる映像演出。早期よりXRを積極的に活用し、運用ノウハウを蓄積してきたヒビノの強い分野です。
(※)XRステージのLEDディスプレイ・システムは、壁面が3mmピッチ「BlackOnyX3」(W9m×H4m×2面)、床面が5mmピッチ「Black Marble 5」(9m×9m)。

この他にも、ステージの各所に設置された画面や天井に向けられたプロジェクターなど、東京ドームの随所に多種多様な映像表示装置が仕込まれていたわけですが、そのすべてに画を送る「送出システム」もヒビノの担当でした。実に「8K」×2枚分。驚異のピクセルコントロールです。これもまた、今までにないスケールだったといえます(イメージとしては、通常のドームコンサートの4倍の規模)。
本番を対応したヒビノの映像チームは、35名。うち6名がメインステージ、3名がXRステージをオペレーションしました。過去のドームツアーが20名体制だったことを思うと、いかに演出の規模が大きかったかを想像いただけるのではないでしょうか。

総面積1万㎡を超えるLEDディスプレイや最新鋭の送出システムなど、映像機材を世界屈指の規模で保有するヒビノ。大規模な映像演出は得意とするところですが、一つのコンサートに投入するシステムとしては、並外れた規模でした。2020年の大晦日は、嵐のほかにも複数の大型案件をサポートしていましたが、持ち前の機材力に加え、コロナ禍で大型会場の現場が少なかったこともあって、希望通りの機材を確保し、理想的な超大規模システムを構築できたことは、救いだったといえます。

「絶対的な安全」はエンタテインメントの約束

ステージデザインに対して「この部分をヒビノにお願いしたい」という依頼をいただき、当社は、どの映像システムを使って、どうやって具現化するかを設計するわけですが、メインステージに吊る巨大なLEDディスプレイ・システムについて、「この規模のものを吊るという意味でいうと、実はとても難しい」と田島は話します。

今回、必要とされた高さ22メートル超の画面を実現させるには、Carbon9というLEDパネルを縦に19段つなげて吊り下げる必要がありました。軽量型の機種ではありますが、1枚10.5kgのLEDパネルだけで、14トン以上の重量です。さらにケーブルやパネル間をロックするプレート、信号を分配するユニットなど様々なものがプラスされます。ステージデザインに求められる巨大画面の実現には、吊り元にかかる負荷を分散させる通常とは異なる設置方法が必要でした。

どんなものも「大規模」になるにつれ「安全の担保」の難易度は上がり、高度な運用技術が必要となります。大規模コンサートを得意とするヒビノ。膨大な現場で培った経験と運用ノウハウは、大きな強みでした。

メーカーに確認をとりながら、吊り元に対して重量を逃がす仕掛けを施したり、落下防止のセーフティーをとったり、強度と十分な安全性を確保する吊り方を模索。様々な策を講じ、破断係数(極限強度)から算出する安全基準をクリアさせて、前代未聞の巨大LEDスクリーンを絶対的な安全のもと、東京ドームへ出現させました。

「普通、吊れないと思うんですよね。19段も」、「高さ22メートルのLEDを吊るチームは、海外を見渡してもなかなかいないかもしれませんね」と静かにほほえむ田島たち映像スタッフの様子に、『この人たちに、できないことなんてないんじゃないか』とワクワクしている自分がいました。昔から、難しい現場、チャレンジングな現場にヒビノが必要とされてきたワケを改めて思います。

細部のこだわりと妥協なき調整はヒビノのプライド

メインステージのLEDディスプレイは、立体的なデザインになっており「角」が存在する構造物でした。ステージ中央から両サイドに向かって広がる画面と、その厚みを表現するような画面(どちらもCarbon9)が合わさる部分です。

筐体としては、つながらないので、必ず物理的な隙間ができ、視覚的にも隙間があるように見えてしまいます。それが、嵐チームの求める完成度に届かないことを分かっていた田島は、Carbon9の「角」に、幅3cmのストリップ型LEDディスプレイ「S18」を設置しました。縦2列のLEDの線で角を埋め、隙間をなくして見せる設計です。

「Carbon9」2面の角に仕込んだ棒状の18mmピッチStrips LED「S18」全48本。幅0.06m×高さ22m×2式

違う種類のLEDディスプレイ・システムを「一体化した画」「美しい画」として見せることは、容易ではありません。画面に映像を送るプロセッサーは機種ごとに処理も異なり、ディレイが合わなかったりするので送出システムを合わせ、それでも合わないのが「色」。違う画面ですから、当然、色も違います。なじむように。なじむように。精密な色調整を行いました。

「これはもう、ヒビノの意地ですね」(田島)

隙間も埋め、違うものが一緒になって見えるようにして、皆様が見ている美しい画面になったわけですが「当社のLEDテックがいたから、できたこと」と続けました。

観客が何も気にすることなく演出を楽しめる裏には、アーティストが求める世界観の完成度にこだわり抜いた、細部の工夫がありました。

品質に対するこだわりは、XRステージ・システムもまた同じ。XRは、現実世界と仮想世界を融合させる技術です。現実のカメラポジションと、バーチャルのカメラポジションがピッタリ合っているから、現実と仮想との境界がわからない異世界をつくりだすことができます。キャリブレーション(測定・調整)が重要なのですが、今回は、これもけっこう大変で。東京ドームの地面は芝なので安定が悪くキャリブレーション環境としては、あまり良くなかったり、本番と同じ明るさで行うカラーキャリブレーションは、おのずと夜にしか作業できなかったり(日中のドームは明るいため)と、挙げればきりのない色々もありつつ、最高の映像体験を届けるため、毎日毎日、それこそ本番の直前までキャリブレーションを続けました。

「より良いものを」全員のベクトルが同じに向いた

This is 嵐 LIVE 2020.12.31に関わった映像チームは、ヒビノだけではありません。グラフィック、スイッチング、カメラ、ARCG、プロジェクター、プロンプターや視聴者の表示を管理するチームなど、映像周りだけで200人以上のスタッフがサポートしていました。

自宅から配信を見た私。このコンサートが大成功だったことを確信していましたが、あえてたずねてみました。

今回の現場は、成功でしたか?

「大成功だったんじゃないですか。映像チームとしては、ほぼ完ぺきに。それは、通常より長い準備期間の中で周到なリハーサルができたことだったり。1,300名いたスタッフ全員がいいものをつくろうと。嵐の最後の一回にみんなのベクトルが向かったからできたこと。ヒビノだけじゃないですね」(田島)

「絶対にとめない」常に念頭にある

イメージを現実のものにする大型映像システム。コンサートの演出で果たす役割は、大きくなっています。映像演出が成立しなければ、ショーが止まる可能性もあるわけです。

「絶対にとめることのないシステムをどう構築するか、というのは常に重視しています」(田島)

This is 嵐 LIVE 2020.12.31は一度キリ。絶対に成功しなければいけません。

実は、会場内の大型映像装置の他、最終的に配信される「16:9の画」の送出もヒビノが担っていました。当社が配信会社へ渡した映像が、皆さまのもとへ配信されていったのです。万が一トラブルが起こった場合にも、配信が止まらないように、何がどうなっても配信がいくように。重要な部分は、すべてにおいてメインとバックアップが存在していて、ステージ演出に関わるシステムも、配信に関わるシステムも、すぐに切り替えられるようになっていました。

大規模なシステムをまったく同じに二つ組むことは難しいので、どう設計し、どう切り替えるか、主要なところに絞りながら設計した『止まらないシステム』が、あの日の成功を支えていました。(余談ですが今回バックアップのシステムが活躍する場面はありませんでした)

ときに、見る者の人生を変えるチカラを持つコンサート。

世界でただ一つ、人生でただ一度、そんな語り継がれる瞬間をつくるため、技術を磨き、挑戦を重ねてきたヒビノのプロ魂を見た現場でした。

いつか、この夢のつづきを、また一緒に届けることができる私たちであるように、ヒビノは進化を続けていきます。

執筆:ヒビノGMC 経営企画グループ 尾嵜浩美
担当事業部

コンサート・イベント大型映像サービスのヒビノビジュアル Div.
https://www.hibino.co.jp/visual/

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