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HIBINO STORIES

サマソニ2024大阪の大型LEDディスプレイ、計10面のレンタル・オペレートを担当

2025.06.23

ストーリー

ステージ写真

毎年東京と大阪の二大都市で同時開催される日本を代表する夏フェス「SUMMER SONIC」、通称「サマソニ」。出演アーティストは100組を超え、来場者も東京・大阪合わせて25万人以上と、国内トップクラスの規模を誇ります。ヒビノは大阪会場の大型映像サービスに初回の2000年から継続して携わっています。夏フェスなど人が非常に多いイベントでは、ステージ後方でゆったりと音楽を楽しみ、アーティストの様子はステージ横の大画面を中心に見る、という方も多いのではないでしょうか。近年では演出の役割も担うようになってきた大型映像。真夏の屋外という、人にとっても機材にとってもハードな環境下で、大型映像サービスを遂行するための裏話を当社ヒビノビジュアル Div. 大阪ブランチの川上から聞きました。

大阪会場の計10面のLEDディスプレイを36名で設置・オペレート

2024年開催から会場を万博記念公園に移したサマソニ大阪。広大な緑に囲まれた敷地内に全5ステージが設けられ、うち4ステージに計10面のLEDディスプレイを設置しました。メインのAIR STAGEのセンタービジョンは幅15メートル、高さ10メートル(約670インチ)にも及びます。大型画面に映し出されるアーティストのパフォーマンスの様子や楽曲に合わせたオリジナル映像は、会場の後方までステージの迫力を届けます。さらに、会場内の注意事項や他イベントの告知等、インフォメーションとしての役割も果たしました。

AIR STAGE:3面ともVanish 8T 写真
AIR STAGE:3面ともVanish 8T(画面サイズ:中央W15,000mm×H8,000mm(669インチ)、左右W8,000mm×10,000mm(504インチ))
MOUNTAIN STAGE:3面ともVanish 8T 写真
MOUNTAIN STAGE:3面ともVanish 8T(画面サイズ:中央W10,500mm×H6,000mm(476インチ)、左右W9,000mm×5,000mm(405インチ))
SONIC STAGE:中央 Vanish 8T 写真
SONIC STAGE:中央はVanish 8T(画面サイズ:中央W14,000mm×H7,000mm(616インチ))、左右はG8 Black(画面サイズ:W9,000mm×5,000mm(405インチ))
SONIC STAGE写真
SONIC STAGEは万博記念公園のシンボル「太陽の塔」の真後ろに位置する「お祭り広場」に設置
MASSIVE STAGE:Carbon5 写真
MASSIVE STAGE:Carbon5(画面サイズ:W5,400mm×H3,000mm(243インチ))

このほか、会場の入り口やフードエリアにもLEDディスプレイを設置して会場全体を盛り上げました。

会場入り口のLEDディスプレイ 写真
写真スポットになっていた会場入り口のLEDディスプレイ
写真

会場が新しく万博記念公園へ移ったことで、管轄する市も変わったほか、ステージの重量制限も変更がありました。また慣れない場所での設営ということもあり、メインのLEDディスプレイは、LEDパネル一枚9.4kgと軽量化された「Vanish 8T」を採用し、スムーズな設営を目指しました。7~9月のコンサート・イベント業界の繁忙期には同日に3つの野外音楽イベントが重なることもあり「Vanish 8T」の稼働率も非常に高まりましたが、国内屈指の機材量により不足なく対応できました。

「例年、サマソニ大阪のステージ構成はヘッドライナーを務める海外アーティストを中心に考えています。ステージ上のLEDディスプレイは年々大きくなっていますね。華やかでとてもいいのですが、大きすぎて安全面から実現が難しい要望がくることもあるため、できないと判断する必要もあります。時期的に台風が直撃したときのことは、常に念頭に置いています。安全あってのエンターテインメントなので」と川上。

スタッフの配置にもサマソニならではの配慮が。
「海外アーティストが多数出演するため、海外スタッフとの英語のやり取りが発生します。こちらも英語を話せるスタッフを毎年必ず入れるようにしています。今回は、海外で大型映像サービス実務経験のある大ベテランの小山と2000年に新卒入社した進の二名を中心に対応しました。通訳を別途雇うこともできますが、映像の専門知識がないと、意思疎通に遅延が発生したり、誤解が生じる可能性が高くなります。社内に英語が堪能な人材がいて、交渉ごとも含めて丸々対応できることも、安心して仕事をご依頼いただける要素の一つかと思います。映像システムのオペレートは外注スタッフも含めて36名で対応しました。」

やり直しのきかないライブを支えるステージの裏側と社内メンテナンス体制

LEDディスプレイに映像を映すには、多くのデジタル機器を使用するため、どんなに入念に準備をしてもトラブルとは常に隣り合わせです。今回、当日の朝にメインステージ「AIR STAGE」上手のLEDパネルの一部が点灯しないトラブルが発生しました。

「何かしらのトラブルは常に想定しているので動揺はありませんでしたが、よりによって当日の朝はタイミング悪いなと思いましたね。機材ごとにトラブル発生時の対応手順が決まっているので、速やかに原因の把握と解決を進めました。
今回会場が新しくなったことにより、設営を例年より二日早い本番1週間前から開始しました。具体的には8月10日から16日のお盆休みあたり。連日最高気温35度を超える酷暑で、時間帯によっては直射日光も当たる屋外に置きっぱなしになるので、機材の心配はしていました」と川上。

開場1時間前に迫っても解決せず。最後の手段として問題のLEDパネルの交換に踏み切りました。このLEDディスプレイは1m×1mの正方形のLEDパネルを横8、縦10枚つなぎ合わせたものを、上部のトラスから吊り下げています。本来、下から順番にLEDパネルを外して交換したいところですが、トラブルが起きているパネルは上から二つ目。下から交換すると開場に間に合わない恐れがありました。そこで、LEDパネルの荷重等、作業の安全性を十分に考慮したうえで、上から外して交換することにしました。「軽量化されている「Vanish 8T」だからこそできました」と川上。手際よく問題のパネルを交換し、無事に完璧な状態で開場を迎えることができました。

パネルの交換作業 写真
パネルの交換作業
パネルの交換作業 写真
パネルの交換作業
パネル交換後 写真
パネル交換後

「大量の機材を使用しているので不測のトラブルは避けられないと考えます。ただお客様はそれでは困るので、トラブルからいかに早く復旧できるかが重要です。トラブルシューティングのマニュアルを頭に入れておくことはもちろん、本番中は映像を送るシステムとステージ上の画面、どちらも交代制で常に監視しています。
経験を積むことで冷静に対応できるようになりましたが、最初の頃は本番中トラブルが起きたらどうしようと胃を痛くしながらオペレートしたものです」

トラブル視認システム 写真
トラブルがどこで発生したか視認できるシステム

川上曰く、「2010年あたりから社内の機材のメンテナンス体制も整え、入荷検査をクリアした信頼のおける機材のみを運用に回しています。それ以降、原因不明のトラブルはだいぶ減っている印象です」とのこと。

ヒビノビジュアル Div.ではメンテナンス業務を行うオペレーション部を設置しています。新しい機材を導入する際はメーカー側の技術担当者と連携を取りリモートで(コロナ禍前は現地立ち会いで)工場受け入れ検査を実施しています。加えて、入荷後には当社独自の入荷検査を行い、クリアした機材のみ運用に回します。検査では実際にLEDディスプレイの画面を組み、初期不良や映像品質をチェックします。
稼働後も機材の状態をみて社内におけるメンテナンスや協力会社と連携した規模の大きなクリーニングを行います。今回のサマソニ大阪のように屋外で使われた機材や稼働率の高い機材は、状態をみてクリーニングを行うことが多いです。また、繁忙期をこれから迎える機材を万全の状態にするためにクリーニングを行うことも。さらに、オペレーション部が中心となり現場で機材を使用するスタッフへ、ケーブルの掃除方法をレクチャーする等、部署全体で機材を常に良い状態に保つための取り組みを行っています。

今回の点灯しなかったLEDパネルのようにトラブルが起きた機材はオペレーション部で修理を行います。機材の状態を確認、時には現場スタッフから話を聞いて、社内で対応可能か、それともメーカーへ問合せが必要かを判断します。トラブルのすべてをメーカーに問合せると返答に時間がかかることもあるため、最も早く解決できる方法を考えます。
また、現場スタッフから使用感のフィードバックがあれば社内メンテナンスに反映させたり、メーカーへ情報共有します。メーカー側も使い手の声を求めている場合があり、それが次の製品やソフトウェアのバージョンに反映されることも。機材の作り手と使い手、それぞれの視点からしか気づけないことがあるので、オペレーション部が両者を連携させることで、より良い機材の運用を目指しています。

大型映像サービスの役割の移り変わり

前述の通り、当社は2000年の初回からサマソニ大阪の大型映像に携わっています。ヒビノは1985年にイベント映像事業を開始し、積極的な機材投資と運用技術の蓄積を行ってきました。2000年当時、LEDディスプレイは比較的新しい機材でしたが、当社は業界の先駆けとして導入し、記念すべきサマソニ大阪の初回ステージの一部をサポートさせていただきました。
初開催は大阪府南港の「WTCオープンエアスタジアム」で行われ、ステージは今より少ない二つ。大型LEDディスプレイもステージの上手と下手に一面ずつ設置され、カメラ中継を映すサービスモニターとして使用されました。2010年頃からLEDディスプレイの軽量化や消費電力の低減、そして価格も徐々に下がったことで、物理的にも予算的にも一つのステージに、より多くのLEDディスプレイを設置することが可能となり、その結果ステージ中央にも追加して合計3面設置するケースが増加しました。上手・下手はカメラ中継用のサービスモニターとして使用し、センターのLEDディスプレイはアーティスト独自の演出映像やMVを流すという使い分けがされるようになりました。

「かつて大型映像はステージから離れた観客向けにカメラの中継映像を映す用途が主だったので、初めて海外アーティストが、大画面に演出用の映像を流しているのを見たときは、そんな使い方もあるのかと驚いた記憶です。大型映像は演出の役割を担うことが増えましたね。ただ今でも、多くの音楽フェスではステージ両サイドの画面はカメラ中継専用で使用すると決めていることも多いです。ライブは生の演奏を聴くのはもちろんアーティストの表情やパフォーマンスを見るのも醍醐味ですからね」と川上。

会場を新たにしたSUMMER SONIC 2024 OSAKA、大型映像サービスは大きなトラブルもなく無事に終えることができました。コロナ禍を経て、夏フェスを含むコンサート・イベントはさらなる勢いをみせています。川上も「今後も業界に先駆けて新しい情報や技術のインプットを欠かさず、顧客に幅広い提案ができるようにしたい」と話していました。

担当部署名
コンサート・イベント大型映像サービス
ヒビノビジュアル Div.
https://www.hibino.co.jp/visual/(別ウィンドウで開きます)

ヒビノGMC 経営企画グループ 広報課