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全員参加で変革に挑むヒビノ・イノベーション推進活動「I Project」

2025.10.15

ストーリー

全員参加で変革に挑むヒビノ・イノベーション推進活動「I Project」 ヒビノ株式会社 代表取締役社長 日比野晃久 写真 全員参加で変革に挑むヒビノ・イノベーション推進活動「I Project」 ヒビノ株式会社 代表取締役社長 日比野晃久 写真

イノベーションとは、革新的なアイデアや技術でこれまでの常識や価値観をリニューアルし、その変化から収益を得ることの総称です。社会を変えるような技術革新だけではなく、新機軸のサービスや新たな価値の提案もイノベーションといえます。

ヒビノ株式会社(以下、ヒビノ)は設立以来、業界に先駆けた製品やサービスを生み出し、それを事業の柱として成長してきました。日本初の本格的なフライングスピーカーシステムの実現、先進的なオリジナル機材の開発、LEDによる大型映像表示と高精細化など、常に先駆けを実践してきたのです。中でもコンサートのステージに大型映像を導入したことは、コンサートの形態を変化させ、社会に新たな価値を普及したイノベーション事例といえるのではないでしょうか。

「ヒビノのイノベーションは現場のこだわりから生まれる」と話すのは、代表取締役社長の日比野晃久です。ハニカム型経営によりグループの拡大を図る中で、今のヒビノグループにイノベーション精神は継承されているだろうか、「変化し続ける風土」を作らなければならない、そんな危機感にも近い思いを抱き2018年2月、ヒビノ・イノベーション推進活動「I Project(アイプロジェクト)」をスタートさせました。

自らイノベーション最高責任者となって推し進める「I Project」について、社長の想いを聞きました。

1. イノベーション創出のDNAと「I Project」の誕生

ヒビノの歴史は、挑戦の歴史そのものでした。では、そのDNAの本質とは何なのか。そしてなぜ今、改めてI Projectという仕組みが必要だったのでしょうか。

日比野

「I Projectを始めた理由を一言で表すなら「原点回帰」です。私たちの歴史を貫くDNAとは、経営理念に掲げる「創造と革新」の精神そのものです。その根底には、「やるからには、その世界で一番になる」、「お客様の期待を超える」という強い意思があります。これらの精神こそが、私たちの価値創造の原点です。

音響の事業も映像の事業も、小規模からのスタートでした。しかし「業界トップになるぞ」という感覚が皆にあって、がむしゃらにチャレンジしたからこそ、オンリーワン、ナンバーワンへと成長したのです。「他に負けない音を出そう」、「まだ誰も見たことのない映像を」と最高の一心を貫き、必要な機材が世の中になければ自分たちで開発までしました。

私が日本で初めてコンサートに大型映像演出を持ち込んだときもそうでした。「コンサートは聴くものだ」とまったく相手にされなくても、「映像はコンサートの価値を何倍にもする。必ず映像の時代がくる」という信念を貫き、夢中で突き進んだ結果、今では「当たり前」の文化になっています。

しかし、企業規模が大きくなるにつれ、この熱い精神は未来へ受け継がれていくのだろうかという危機感を覚えました。だからこそ、私たちは原点に立ち返る必要があったのです。

イノベーションは、あくまで結果です。ヒビノグループが目指すイノベーションとは、「最高の音」と「最高の映像」のあくなき追求から生み出される、新たな価値の創造に他なりません。それが、まだ誰も知らない感動や、音と映像の新しいコミュニケーションの形をつくりだしていきます。I Projectは、最高に挑み続けるヒビノのDNAを未来へと継承し、体系化するための私の挑戦です」

2. 「I Project」の仕組み、アイデアを事業の成長に変えるプロセス

ヒビノ・イノベーション推進活動「I Project」は、ヒビノグループのすべての社員と役員からアイデアを募り、実現化までのプロセスをサポートする取り組みです。新規事業の創出だけでなく、既存事業の強化や業務改善もイノベーションと位置付けています。アイデアの特性に合わせた二つのルートを用意し、あらゆる挑戦を支援します。未来の非連続な成長を目指し、新規事業を創出する「コーポレート版」。既存事業の強化や業務改善を通じて足元の収益基盤をより強固なものにする「組織版」。この両輪で、中長期的な企業価値創造と短期的な競争力向上を同時に追求しています。

コーポレート版:未来の事業の柱を創る

新たな事業化につながる挑戦的なアイデアや、複数の事業セグメントを横断するシナジー効果の高い取り組みを推進します。社長が直接審査を行い、採択されたプロジェクトには、事業化検証のための予算を策定。役員と事務局が伴走し、インキュベーションを支援します。

組織版:現場の力を事業強化につなげる

日々の業務から生まれる「現場ならでは」の課題意識や改善案を、スピーディーに事業強化へ反映させるルートです。自部門が抱える課題の解決策として、新たな製品や技術の開発、DX推進による抜本的な業務効率化など、お客様への提供価値と収益性の向上に直結するアイデアを主導します。ヒビノグループでは、自社の価値観をまとめた「ヒビノ10訓」に「現場主義経営」を掲げているように、常に現場の視点を大切にしてきました。各部門が主体となって実現を目指すことで、有望なアイデアの種を確実に花開かせていきます。

これらを円滑かつ継続的に運営するため、社長の直下に事務局を置きプロジェクト全体の調整役として機能させる一方、全部門に推進委員を配置してイノベーションの重要性を啓蒙。現場からアイデアが出やすい風土を醸成する役割を担い、組織の隅々まで挑戦の文化を浸透させるとともに、各部門の具体的な状況に合わせた展開を後押しします。

3. 「I Project」から生まれたイノベーション事例

これまでI Projectには、500件を超える提案が寄せられ、約150件のアイデアが実施されました(2025年3月末現在)。どのような課題から生まれ、製品化・サービス化に至ったか3つの事例を紹介します。

事例1:ODS上映を革新する映画館向け次世代配信システムの共同展開
Live配信のイメージ

近年、映画館のODS(Other Digital Stuff=非映画デジタルコンテンツ)市場が拡大し、音楽ライブや舞台、スポーツイベントなど多彩なジャンルが上映されています。これまでのODS配信は、伝送の都合による圧縮を繰り返したステレオ音声と2K映像が中心で、映画館が持つ高性能な音響・映像設備を活かしきれていない状況でした。映画館向け上映システムの設計・施工を手掛けるヒビノイマジニアリング株式会社は、「劇場設備を最大限に活かす、音と映像の次世代配信インフラの整備」を目指し、株式会社コルグと共同でODS上映に特化した高品位かつ柔軟な配信・上映環境を展開していきます。

参考:https://www.hibino-imagineering.co.jp/news/2285/(別ウィンドウで開きます)

事例2:広帯域薄型電波吸収材「S-WAVE(スウェイブ)」の開発
イメージ写真

シールドルームと電波暗室は、いずれも室外からの電波の侵入と室内の電波が外に漏れることを防ぐ部屋です。シールドルームの中では電波反響が起こります。一方、電波暗室は電波吸収材で電波反響は抑えられるものの、大掛かりな施工が必要でした。この中間を補える仕様として、電磁遮へいに関する設計・施工を手掛ける日本環境アメニティ株式会社が発案したのが、軽量かつ薄型の広帯域電波吸収材「S-WAVE」です。これをシールドルームに付加することで電波反響を抑え、簡易的に電波暗室と同じような環境を整えることを可能としました。電波吸収材は一般的にピラミッド型ですが、S-WAVEは薄い平板の構造を実現し、室内の有効寸法を圧迫せず、必要に応じた着脱も可能。大学研究施設や官庁施設などで、コスト効率高く電波暗室同等の簡易設備が作れる、また、シールドルーム性能の安定性を高める手段として採用が広がっています。

参考:https://www.nea-ltd.com/column/emishield/010.html(別ウィンドウで開きます)

事例3:Bluetooth®新方式に対応した「業務用Auracast™音声送受信システム」の開発
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音響を中心に映像・照明・制御・ネットワークまで、世界中から選りすぐった116ブランドの業務用機器を輸入販売し、システム設計・施工を手掛けるヒビノマーケティングでは、プロの現場で培った技術力と深い市場理解を製品開発に活かす「ものづくり」活動を開始。第一弾としてBluetooth®の新規格であるAuracast™をいち早く利用した、業務用音声送受信機を開発しました。これまでのBluetoothでは困難だった1対多数の同時音声配信を、低遅延・高品質に実現。世界中に普及しているBluetoothを使うことで、より手軽で柔軟な音声配信ソリューションを業務用市場に提案します。専用受信機を不要とし、どの席でも誰もが同じ高品質音声を聴ける「開かれた音声共有」を目指した本製品は、施設やイベント会場における多言語ガイドやバリアフリー音声配信、静音環境での情報伝達など、幅広い活用が期待されます。

参考:https://marketing.hibino.co.jp/information/5428.html(別ウィンドウで開きます)

4. 変革への挑戦が、未来の価値を創造する

日比野

「ヒビノは創業以来、常に時代の一歩先を読み、「最高の音」と「最高の映像」で多くの人々の感動を作ってきました。I Projectは、その挑戦のDNAを組織全体で実践し、未来の成長エンジンを育てるためのグループ成長戦略の中核にあります。

私たちが目指すのは、感動や喜びの創出はもちろん、人々の安心・安全な暮らしにも役立つイノベーションです。人間は、情報の9割を耳と目、つまり音と映像から得ているという説があります。そこに、我々の技術が貢献できる可能性は無限にあります。例えば、いい音を届けることはもちろん、不要な音を消すことも社会的価値の高い技術です。

変化の速いこの時代で、立ち止まることは後退を意味します。だからこそ、私たちは自らを変革し続けなければなりません。イノベーションは「変化し続ける力」から生み出される、ヒビノの持続的成長を駆動するエンジンです。I Projectから生まれる一つひとつの挑戦が、未来のヒビノグループを形作り、新たな企業価値を創造していくと信じています。

株主・投資家の皆様には、私たちの挑戦がもたらす成長にご期待いただきたい。そして社員と未来の仲間たちには、このエキサイティングな変革の旅に加わり、共に未来を創る主役となってほしいと心から願っています」

ヒビノGMC 経営企画グループ 広報課